学生時代、接客のアルバイトをしていた時です。

私が働いていたある日本料理店は、ほぼ完全個室のお店でした。

ホールスタッフは基本、一人で三部屋を担当として受け持ちます。

料理は一品ずつ、お客様の召し上がるスピードを見ながら調理場にオーダーし提供します。

コースには基本、鍋が付き、お客様の目の前で作ります。

食べごろを見極め、お客様にお教えするのもホールスタッフの役割の一つでした。

その日、私は三部屋同時に受け持っていました。

召し上がるスピードもほぼ同じであったため、他のホールスタッフの手も借りながら三部屋を回っていました。

そうして目まぐるしく料理を運んでいた時、ある一部屋のお客様から内線が入りました。

電話を受けたのはホールスタッフをまとめるリーダー。

私たちアルバイトの指導役の方でした。

内容は火をかけている鍋をそのままにしていいのか、というもの。

鍋はIHコンロのため、火事などの恐れはありませんでしたが、長時間煮詰められた状態の鍋の中身はほとんどなくなってしまっていました。

バタバタと目の前の仕事をこなしていく中で、注意力が散漫になり、一つのお部屋の鍋をダメにしてしまったのです。

謝りに行くと、お客様は快く許してくださりましたが、失敗してお客様はもとよりお店に迷惑をかけてしまったことに自己嫌悪に陥りました。

自分の不注意で失敗し、翌日の仕事に行きたくない気持ちになりました。

けれど、これ以上迷惑はかけられない、と今まで以上に注意をするよう心がけました。

忙しい時ほど、注意力は散漫になり、失敗はしやすいものです。

だからこそ、バックヤードに戻った時には一度自分を落ち着かせるようにしました。

忙しさでパニックになりやすいからこそ、一度落ち着くことで頭の中を整理できます。

そして、その場の状況から、誰かに頼めることなら、時に頼ることも必要だと思います。