私は昔、靴屋でアルバイトをしていました。
ショッピングセンターに入っているような靴屋で、子ども靴から老人向けの靴まで、色々な靴を取り扱っているお店でした。
私がいた店では、お客さんが欲しいと思った靴のカラーやサイズが売り切れで店頭になかった場合、取り寄せることができます。
また、作ってはいるけれどもお店に入荷しないサイズがあり、お客さんの希望があればそれを取り寄せることもできます。
私のアルバイトでの失敗談はいくつかありますが、今回はその「取り寄せ」に関する失敗談を紹介したいと思います。
私が靴屋でのアルバイトを始めて1年近く経とうとしていた日のことでした。
その日は休日ということもあり、店は多くのお客さんで賑わっていました。
そのうえ、新作の入荷もあり、それを店頭に並べたり、季節に合わせてディスプレイを変えたりと大忙しでした。
そんななか、ある親子のお客さんがスポーツシューズを見ていました。
お母さんと中学生の息子さんでした。
息子さんのシューズを探しているようなのですが、なかなか気に入るのが見つからないようで、店内をしばらくうろうろしていました。
普段は声をかけて接客をするのですが、その日はあまりの忙しさに接客に入る余裕がなく、そのとき私はひたすらレジ打ちを繰り返していました。
どんなにレジ打ちをしても、なかなかお客さんが途切れない。
そんなとき横から「すみませーん」と声がしました。
見ると、先ほどの親子さんが店員を呼んでいる様子。
そのときちょうどレジ待ちのお客さんが途切れたので、私は急いで親子さんのところに行きました。
「すみません!お待たせいたしました!」と私が声をかけると、お母さんが「このシューズの30cmってないですか?」とたずねてきました。
お母さんが持っているスポーツシューズの30cmは店頭になく、取り寄せになるものでした。
しかし、私は忙しさのあまり「すみません、今こちらで30cmは取り扱っていないんです」と答えてしまいました。
するとお母さんは「は?じゃあ取り寄せてよ。
前はすぐ取り寄せてくれたし」と怒ってしまいました。
その様子があまりに怖かったのと、忙しさのあまり適当に答えてしまった失敗を悔やんで、私は思わず泣きそうになってしまいました。
私のその様子に気づいた息子さんが「お母さん、もういいって」とお母さんに声をかけていました。
私はこのままではダメだと思い、慌てて謝罪し、取り寄せ作業に入りました。
そのあいだもレジ待ちのお客さんの対応をしたり、他の接客が入ってしまったりと目が回るような忙しさでした。
なんとか取り寄せ作業を終えた後、改めて親子さんに謝罪をしました。
息子さんは申し訳なさそうにしていましたが、お母さんはまだ少し怒っている様子でお店を出て行かれました。
どんなに忙しくても接客はおろそかにしてはいけないと、このとき改めて学びました。
お客さんが店員を呼ぶときは何かしら困っているときです。
そんなとき、店員に適当な接客をされたら、あまりいい気はしませんね。
お客さんが店員を呼ぶときは困っているときで、店員はその問題の解決にしっかりと取り組まなければいけない。
この失敗は、そんなことを学んだ失敗でした。