田舎の喫茶店でアルバイトをしていたときのことです。

個人経営の小さな喫茶店で常連のお客さんが多く、大体いつも頼むものは同じなので、注文時に伝票を書くというクセが付いていませんでした。

そんな時、近くの工事現場で作業中の社員さんが10名ほど、お昼ご飯を食べに来店されました。

一度に10名も対応したことがなく、それだけで私は焦ってしまいました。

最初に出すお水とおしぼりもさすがに一度には持ちきれず、2回に分けて運んだりしました。

何となくそれが、自分の中でモタモタしているような気がして、お客さんに遅いと思われたらどうしようと内心ドキドキしていました。

注文は、さすがに伝票に書くことにしましたが、お客さんの口調は早く、またバラバラであったこともあり、更に私は焦りました。

メニューをフルネームで書かず、省略して書いたりしましたが、それが失敗の元でした。

ハンバーグ定食をお出ししたら、そんなの頼んだ人はいないと言われました。

伝票をよく見返すと、私は「ハンバーグ」としか書いていませんでした。

ハンバーグのメニューは、ハンバーグ定食とハンバーグカレーがあります。

ハンバーグと書いた上の行は「カレー」と書いてありました。

たぶん、同じカレーだったのでハンバーグとさえ書いておけば上に習えでハンバーグカレーだとわかる、と勝手に思い込んでいたようです。

お客さんに平謝りすると同時に、マスターにも平謝りでした。

同時に10名のお客さんなので、時間差が出来てしまっては困ります。

今から作り直しと、この行き場のないハンバーグ定食をどうしたらいいか分からず、私は泣きそうでした。

注文の時に焦らずゆっくり書けばよかった。

早口なら聞き直せばよかった。

注文内容を繰り返せばよかった。

後悔の念が頭の中をぐるぐるして、立ち尽くしてしまっていました。

たまたま常連のお客さんがお昼ご飯を食べに来て、「その定食俺が食べるよ」と言ってくださいました。

とても優しくて、涙が出そうでした。

常連のお客さんに助けられたこともあり、何とか事をやり過ごすことができましたが、私は反省することだらけでした。

伝票はしっかり書くこと、曖昧な表記はやめ、わからなかったら聞き直すことが大切であると、改めて学んだ失敗でした。